住宅コラム

隣の家とは違う家

第2次世界大戦で敗戦した後、進駐してきたアメリカ軍が地方の旧家を接収して、軍の司令部を置くことになった時の話です。「そこの庭にある石灯篭は、苔が生えていて汚いのでペンキを塗るように」と司令官が指示したそうです。この話を聞いた私は「アメリカ人はなんと野蛮な人種なんだろう。苔むした石灯篭の美しさを理解できないで、なんでもかんでもペンキを塗るなんて…」と思いました。 日本では、古来から建物の建材に自然素材を上手に使ってきていて、木材・土・紙・わら・石などを適材適所に使い、それなりに美しい建物を造ってきたのです。そんな私達日本人が、いつのまにか便利だからと言って、新建材やビニールクロスを多用し、小奇麗ではあるがどことなく薄っぺらな建物ばかり建てるようになってしまいました。今では野蛮だと思っていたアメリカ人の方が自然素材を自由に使いこなしています。
私がカナダやアメリカで見た建物には、節が抜けていたり、ヤニが出ている天然の板をそのまま天井や壁にふんだんに使っており、それなりの雰囲気をかもし出していました。自然素材は、不便で手間のかかる素材ではありますが、時間の経過とともになんともいえない深い味わいを出します。私達も苔むした石灯篭を汚いと感じるのではなく、美しいと感じられる日本古来の感性を取り戻したいものです。そして、自然素材をできるだけ多く採用し、豊かで美しい空間を蘇らせなければならないと考えています。

隣の家とは違う家

日本の伝統的な数奇屋造りの住宅は、自然素材で造られていて大変美しいのですが、大変高価な建物でもあります。坪当たり200万円程度は平気でかかるようです。木材は節のない高価なものを使い、壁も漆喰など手間のかかる材料を使用し、建具の引き手一つでも高価な物を選ぶのですから当然でしょう。柱や鴨居などが織り成す真壁のダイナミックで美しいコンストラストには独特なものがあり、最近の住宅の主流である柱を見えなくする大壁とは全く違う趣があるのです。しかし、断熱的には欠点があり、とても北海道の庶民が住めるような住宅ではありません。 数奇屋造りではありませんが、柱が見える真壁の住宅づくりは全国各地で色々試みられています。低価格を実現するため節のある柱を使って、壁も低コストにするため色々な材料に挑戦しているようです。北海道でも気密と断熱が可能な真壁が開発されており、遅まきながら少しづつ実施例が増えつつあります。
極寒の地域に住んでいるのですが、私達は北欧人ではなく、あくまで日本の文化を継承している日本人です。私達には、先輩が作り上げてきた文化を受け継ぎ、現代生活に適合した形に作り変え、磨きをかけて後輩に受け継いでいく使命があると思うのです。もちろん、長い伝統の中で培われてきた大工をはじめとした様々な職人と共に力を合わせて、完成度の高い住宅をめざしていく必要があります。グローバルな価値が問れている現代であればあるほど、ローカルな価値を高める努力が求められていると思います。

隣の家とは違う家

日本の住宅は値段が割高だと言われています。昭和62年にカナダに行ったときに聞いた話では、たしか坪当たり28万円位だったと思います。当時でも暖房設備を入れれば日本でも坪当たり45万円位だったので、為替の関係上、単純には比較できませんが、やはり値段が大変違うことに驚いた記憶があります。
なぜ、こんなに差ができるのか、私なりに感じたことを整理してみると次のようになります。
① 仕上げが全般的に雑である。特に外壁や屋根などの仕上げなどのねじれや、曲りには無神経であり、建て主も建設業者も気にならないようである。
② 建て前の状態の建物を見る機会があったが、ツーバイ材の構造材そのものが雑である。木材の節が抜けていたり、欠けていたり、曲っているものも平然と使われていて、金物も無骨で手間のかからないものが使われている。建前という儀式がある日本では、とても考えられない材料が平然と使われている。
③ 日本の住宅の床は、玄関や和室や押入れや浴室などでそれぞれ高さが違って、大工の手間がかかるよう出来ているが、玄関から収納や浴室まで同じ高さの床で構成されている。しかも、押入など細かな間仕切壁がないので、手間がかからないように出来ている。
④ 木材やサッシ類など建材の寸法による種類が少ない。したがって、販売店の在庫負担が日本のそれより少ないと思われるので、流通コストが掛からないと思われる。
⑤ 建材の販売店が日本とは違って建設業者専用ではなく、一般の消費者を対象にした販売店しかない。したがって、現金決済であり、建材の配達もしないので、流通マージンが少なくてすむと思われる。
以上のことから垣間見えることは、前にも述べたように、家族の安らぎを最重点に求める日本の住宅と、そうでない外国との差が価格の差に現れているということです。さらに、きめ細かなサービスを求める日本特有の流通システムの問題が、価格の差に拍車をかけています。しかし、これらのことを勘案しながらも、ぎりぎりの許容範囲を見極めて、コストを下げる努力が必要であることは言うまでもありません。

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